ハートが幼稚園に行き出してから、私は長期の出張をした事がない。
自宅を開けたとしても、1泊程度のはずだ。2泊の出張に出た記憶は、私には無い。
極力、仕事で自宅を空けることを避けてきたのだ。
だって、子供の顔が見られないのは、寂しいじゃん(笑)
だが、そうも言ってられない状況というのがどうしても出てきてしまった。
7月に私は、1週間程自宅を留守にしなければならない。
ハートの事が気になっていた。
ハートは、今、私とずっと一緒に寝ている。そして、寝る前には、必ず私の創作のお話を聞いてから寝るようになっている。
ちなみに、私のお話は、魔法の国のアレックスという、ハリーポッターの子供向けみたいな話(笑)
今日、ハートとメリーの服を買いに行ったデパートの帰り、食事をしながら、奥さんがその事をハートに切り出した。
お父さんが、しばらくお家に帰ってこないけど、大丈夫?と。
最初は、でも出来るだけ早く帰れるようにしてね、と言ったり、うまく状況を理解できていなかったハート。
帰る時間が遅くなるんじゃなくて、帰ってこないから、朝になってもお父さんがいないのよ、そういう日がしばらく続くけど平気?と説明する奥さん。
徐々に解ってきたのだろう、「え〜、そんなの絶対に嫌だよ」と言った後、無口になった。
そして、下を向いて、一生懸命泣くのをこらえている。
私がレジで会計を済ませてテーブルに戻ると、ハートは奥さんの胸に顔をうずめて泣いていた。
2年前。奥さんがメリーを出産する時、病室の奥さんと別れた後のハートを思い出した。
病室を出て車に乗るまで、決して涙を見せなかったハート。車に乗ってはじめて、お母さんと離れるのだ嫌だと、毎日私の胸に顔をうずめて泣きじゃくっていた。
あの時は奥さんの前では涙を見せないように、今日は私の前では涙を見せないように、必死で我慢をしていたのだ。
愛しくて、可愛くて、そして可哀想で、胸が一杯になった。
ハートを抱きしめて、お父さん頑張って早く帰るからね、そう言うのが精いっぱいだった。